呑兵衛風来坊 のんべーふーらいぼー

今年の冬コミでの合同誌企画参加に伴い、同人活動を本格的に始めます。ジャンルは『東方Project』『オリジナル』です。基本的に二次創作は東方以外には手を出していません。

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ワード【砂】【本屋】【公園】




「どうしてここにある本は『砂』だらけなの?」

 子供が寄り付かなくなって久しい、公園の傍に立った『本屋』。
 その本屋で店主を五十余年も勤める錆びれた爺に私は尋ねた。

「長い間そこにある本だからね、砂も付くさ」

 爺は木で出来た椅子を軋ませながら、寂しげな声で答えた。

「外の公園は住宅の真ん中にあるのに、どうして子供が一人も居ないの?」

 本に付いた砂をさっさと払いながら、寂しい爺に尋ねた。

「長い間あそこにある公園だからね、人も居なくなるさ」

 爺は木で出来た椅子を軋ませながら、懐かしそうに答えた。

「そういうモン?」
「そういうもんさ」

「この本屋には、それこそ何百回も【いる】けど、あんたはいつもそう答えるよね」
「長い付き合いなんだ、言葉も同じになるさ」

「そういうモン?」
「そういうもんさ」

 付いた砂を一通り払い終えた私は、本をあった場所に戻し、その横の本を抜き取って、再び砂を払い始めた。

「あんたはその椅子から立つことが一度も無かったね」
「長い付き合いだからね、こいつとも。離れるのが淋しいのさ」

 爺は欅と樫で出来た五十年来の友人を、皺々でヨボヨボの手に慈しみを溢れる手つきで撫で付ける。

「ここにある本は変わり映えしないね、ボロボロなのに捨てもしないし」
「長い付き合いだからね、そいつらとも。離れるのが淋しいのさ」

 爺は膝に置いて読んでいた古本を閉じ、形を確かめるように本をなぞった。

「その割には扱いが雑じゃないか。長い付き合いでも、こいつらはあんたを嫌ってるかもよ」
「そうかもね。でもここは『サミシイ本屋』だからね。
 淋しくなるのが嫌だから、嫌いにもならないし嫌われもしないんだ」

 爺は私に寂しそうに説明した。

「まあ、本に嫌われるはずもないけどね、だって本だもん。
 人に嫌われることはあっても本に嫌われるわけない」
「そうかもね。でもここは『サミシイ本屋』だからね。
 淋しくなるのが嫌だから、本も人も嫌いにならないし嫌われもしないんだ」

 爺は私に寂しそうに、そう言葉を返した。

「でも、私は【爺ちゃん】は嫌いだ」
「そうかもね。ここは『サミシイ本屋』だけど、お前は私を嫌ってるかもね。理由は知ってるけど、理由を聞いても良いかい?」

 ようやく爺は顔を私の方に向けて、尋ねてきた。
 爺の顔はボロボロだった。もうそろそろ死神に宵越しの銭を数えてもらわないといけないくらいにボロボロだった。

「知ってると思うけど言うよ。
 だってここは『サミシイ本屋』なのに、爺ちゃんはいつも本をぞんざい扱うから」
「ああ、じゃないとお前が来てくれないからね。でも、嫌われるのは仕方がないよ。
 だって、私は『サミシイ本屋』の店主だからね」

 爺は言って、【淋しい】笑みを零した。

「……知ってると思うけど言うよ。
 だってここは『サミシイ本屋』なのに、爺ちゃんはいつも寂しそうなんだもん」
「ああ、でも仕方ないよ。
 だって、私は『サミシイ本屋』の店主だからね。
 私が淋しくないと『サミシイ本屋』は無くなってしまうからね」

 爺は寂しそうに言って、五十年来の友人に預けた腰を持ち上げて、ゆっくりと私の方へと歩み寄ってきた。

「…………知ってると思うけど言うよ。」
 だって、『サミシイ本屋』の店主は私の爺ちゃんなのに、一度も私の名前を呼んでくれたことがないんだもん」
「ああ……でも仕方ないよ。
 だって、私は『サミシイ本屋』の店主の孫のお爺ちゃんだからね。
 孫にも嫌われてないと『サミシイ本屋』の店主は淋しくなくなってしまうからね」

「馬鹿だね、爺ちゃん」
「馬鹿だな、――――ちゃん」
「おやすみ、爺ちゃん」
「おやすみ、――――ちゃん」
「『【淋しい】本屋』はどうするの、爺ちゃん」
「『【寂しい】本屋』にしてくれよ、――――ちゃん」
「うん、わかった。おやすみ、爺ちゃん」
「うん、ありがと。おやすみ、――――ちゃん」






追記にて解説紛いのものを載せています。客観的に人を見たり、風景の描写には【寂しい】を使い、
感情(自身)は「淋しい」を使うのが普通らしいです。


爺ちゃんは孤独だったけど、最後は孤独じゃなくなった。
最初から孤独じゃなかったけど、最後は本当の意味で孤独じゃなかった。
孫との和解。和解じゃなくて理解だけど。

店は爺ちゃんの【淋しい】本屋から、孫が引き継ぎ【寂しい】本屋になった。


寂しいと淋しいの違いを踏まえつつ、もう一度読み返すと、また違って観点から見える物があるかもしれません。
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